身近な野草いのちぐさ

 家の前の少しばかりの畑で、野菜作りをしています。蒔いた種はなかなか生えませんが、雑草は抜いても抜いても、次々生えてきて手に負えません。毎日草取りに追われています。

 雑草をふくめていわゆる野草の生命力には驚きます。人に踏まれる所でも、やせ地でも、アスファルトのすきまでも、日の当たる所ならいたる所に生えてきます。こんな野草もほとんどが食べられるようです。私が子どもの頃には、戦中戦後の食糧難の時代でしたから、ここに取り上げた野草はほとんどのものを食べた記憶があります。今、八百屋さんの店頭に並んでいる野菜は、見かけのきれいなものばかりですが、人の手の加わっていない自然の野草は、ビタミンとか体に良い成分が沢山含まれていると聞きます。草取りをしながら手にとって見る野草(雑草)は、実に可憐であり、その生命力が伝わってきます。

 今回は、どこの畑や庭や道ばたでもごく普通に見られる野草(雑草)を数点取り上げてみました。皆さん!是非一度食べてみては如何ですか。雑草のたくましい生命力は、まさにいのちぐさといえるでしょう。

 写真のような表紙の野草の小冊子を作った。次は巻頭文である。
いのちぐさ本の表紙写真 現在はまさに飽食美食の時代、農薬・化学肥料・ビニールハウス… 見た目に美しく色とりどりの野菜が、旬を忘れ、年中お店に行儀良く並んでいる。こういうものをいつも食べている、私たちのからだは今、温室育ちのように「ひ弱」になってきているのでは… 
 庭や畑の雑草は始末におえない。オオバコ、スベリヒユ、カタバミなど、人に踏まれても、抜いても抜いても生えてくる。雑草は人の手が加わることなく、きびしい自然環境のなかで耐え抜く、強い生命力の持ち主だ。
 さんさんとふりそそぐ太陽の恵みを受け、大地のエネルギーを基に生育している、その雑草を食材として見直してみたい。見かけは悪い雑草の思いがけない働きは、私たちの生命力を高め、生理機能を正常にしてくれる。これこそ『いのちぐさ』ではないだろうか。
 身土不二(しんどふじ)という言葉がある。私たちの身体とその土地環境とは、切っても切っても切り離せない存在… と言うことだ。
 いのちぐさ【初巻】編集にあたり、私たちの身近にありながら見捨てられていた雑草たち29種を取り上げ〈1〉ほらそこに、いのちぐさ 〈2〉さあ、たべてみよう 〈3〉こんなに、いいんだよ の3項目にまとめてみた。
 食べることと同時に、野草を探しに自然と触れ合うことで、心身のリフレッシュにもなる。これこそまさに『いのちぐさ』。その素晴らしいエネルギーをこの小冊子から読み取っていただきたい。                  



 今から約60数年前戦中戦後の食糧難の時代、食べ盛りの子どもの頃を想い出す。付近の山や草むら、田んぼの畦や畑の縁に母親と一緒におかずにするために野草を摘みに行った。
 春先の田んぼの中には「たびらこ」(コオニタビラコ)が沢山採れた。ロゼット葉といって葉が土にへばりついている。帰って母親はそれをきれいに洗って油炒めにして食べさせてくれた。今は亡き母親の苦労と、「たびらこ」のおいしかったという記憶がよみがえる。
 近頃は、春先のコオニタビラコをほとんど見かけなくなった。田のあぜ道や道端に「がんそう」(ヤブカンゾウ)をよく採りに行った。まだ若い数センチ前後のものを茎の根元から摘み取る。これは酢味噌和えにして食べた。独特のぬめりがあっておいしかった。
 春から夏にかけて畑の雑草として生えるアカザ。これは煮浸しにして食べていた。食糧難の時代だからかおいしいと思って食べた。食べるものがなくて「ヒモジイ、ヒモジイ」と言って泣く我が子のために母親は食料を求めてずいぶん苦労したことだろう。
 飽食の時代、今ではとても考えられないことだ。(ダンジョー)


 春の足音がきこえてくると、いち早く目覚めて淡い緑の頭をのぞかせるフキノトウ。そのほろ苦さがなつかしいあの日へと誘ってくれます。
 あの暑い夏の日、友達と虫を捕りに行った森や林。秋になると赤や紫の実をつける木々たちが濃い緑の葉を茂らせています。やがてそれらの葉が赤や黄色に色づく頃、木の実もたわわに実ります。その木の実を求める子供たちの楽しそうな声が辺りに響いています。
 「栗があったよ 今日のおやつは焼き栗にしよう」
 「うん しよう しよう」
 「でも ゆでるのもいいね」と幼い友達の声。
 やがて冷たい風が吹き始めると、囲炉裏を囲んで干し柿を食べながら父の語る昔話に耳を傾けます。
 いつしか季節はめぐり 森や林は姿を変えました。しかし あの味が懐かしくて林に分け入ってみました。子供の頃には気が付かなかった… 足で踏んづけていた 名もない草や花。ひょっとしたら 森や林の いのちの始まりなんだ。きっと そうだよ。みんなの いのちの素でもあるんだ。ほら そこにある 名もない草花に 『いのちぐさ』と名付けたい。懐かしい いのちぐさたち ごちそうさま。(サチコ)

『いのちぐさ』の小冊子の中から何種類かを抜粋してみました。


オオバコ(おおばこ科)

オオバコ特徴
 日当たりの良い道ばた、庭、、野原に普通に見られる多年草。葉に5〜7本の太い葉脈が走っていて、ちぎれにくい。葉が大きいので「大葉子(おおばこ)」という名前がつけられました。

食用
 春〜夏の若葉を、てんぷら、ゆでておひたしやあえものにします。

薬用
 乾燥させて、咳止め、利尿に煎服します。 ※煎服とは、薬草を煎じて飲むことです。

 
カタバミ(かたばみ科)

カタバミ特徴
 道ばた、畑などいたる所に生える多年草。噛むとすっぱい味がするのは、シュウ酸を含むためです。5月〜10月に黄色の5弁花をつけます。葉の一部分がかじられたように欠けているので、「傍食(かたばみ)」といいます。

食用
 4月〜9月頃につみとり、ゆでてから流水にさらした後、おひたし、あえもの、てんぷら、油炒めにします。

薬用
 小さな傷の血止めに。葉をすりつぶして、かゆみ止めにつかいます。 

 
 スギナ(とくさ科)

スギナ特徴
 土手、畑、野原どこにでも広く自生する多年草。地下茎は地中を横にはって、その節から地上茎を出します。地上茎には、栄養茎(スギナ)と胞子茎(ツクシ)とがあります。早春に筆の穂のようなツクシが出てきます。まもなくその付近から緑色のスギナが芽を出し、夏に繁茂します。形が小さい杉の木に似ているので、「杉菜(すぎな)」というのだそうです。

食用
 つくしの袴(はかま)をとり、ゆでておひたし、あえもの、油炒め、煮浸し、卵とじに。

薬用
 スギナは、利尿、せき止め、解熱に煎服します。スギナ茶にして飲みます。 

 
スベリヒユ(すべりひゆ科)

スベリヒユ特徴
 日当たりの良い畑、道ばた、荒れ地などに地面をはうように茎が広がっている一年草。茎や葉は多肉質で、つやがあります。夏に黄色の小花を、晴天の午前中にのみ開きます。茎や葉をつぶすと粘液でぬるぬるするので、「滑りひゆ」といいます。

食用
 初夏から秋にかけて根をのぞく全草を、ゆでてあえもの、煮浸しに。茎をゆでて乾燥させ、ゼンマイ風に利用します。昔、飢饉にそなえて夏に採取して乾燥させて、ひたしものにして食べたといいます。多食すると下痢をするそうです。

薬用
 利尿に6〜9月頃全草を日干しにして、煎服します。毒虫に、生葉の汁液をすりこみます。

 


タンポポ(きく科)

タンポポ特徴
 日当たりのよい道ばた、土手、野原、丘陵、山地、海岸、河原などいたる所に生える多年草。在来種の関東タンポポや関西タンポポは、外来のセイヨウタンポポに圧倒されて、その影がうすれてきています。この写真はセイヨウタンポポで、花の下の緑色の総ほう片が外側にそり返っているのが特徴です。種子の毛が”たんぽ”に似ているので、「たんぽ穂」といいます。

食用
 葉はゆでて水にさらし、お浸し、あえもの、汁の実に。花はゆでて、三杯酢に。根は油で炒めてきんぴら風に、乾燥させて、いって粉末にし、タンポポコーヒーにするとよいでしょう。

薬用
 葉や茎を天日で乾燥させ、健胃、採乳、利尿、浮腫に煎服します。

 

ツユクサ(つゆくさ科)

ツユクサ特徴
 道ばたや人家の付近の荒れ地に多い一年草。6〜9月にかけて鮮やかなコバルトブルーの蝶形の花をつけます。花は朝開いて夕方にはもうしぼんでしまう、はかない命です。根を抜いてほおっておいても、茎から根を出す丈夫な植物です。昔この花の汁で布を染めたので、「着き草」といったのがはじまりといいます。

食用
 熱湯でさっとゆでて、サラダやあえもの、炒め物に。

薬用
 全草を花の咲く頃につみ取り、天日で乾燥させます。利尿、腎臓病、リウマチ、下痢止め、血栓予防に煎服します。

 

ドクダミドクダミ(どくだみ科)

特徴
 林の中や道ばた、日陰の庭先に普通に見かける多年草。地下茎が横に延びて増えるので、群がって生えます。夏、白い花びらに見える4枚のほう葉とその中心に黄色の小さな花を穂につけます。全草に独特の強いにおいがあります。毒でも含んでいそうな悪臭があるので、「毒溜め(ドクダメ)」といいます。また、10種の薬効があるということで「十薬」ともいわれています。

食用
 春から夏に、葉はてんぷらに。熱湯でゆでて水にさらして各種あえものにします。揚げ物にすると、臭気がとんでおいしく食べられます。

薬用
 乾燥したものを、利尿、便通、高血圧予防に煎服します。蓄膿症、鼻炎、はれものに、トロ火であぶった葉を患部に貼りつけます。また、ドクダミ茶としても利用されています。

    

ナズナ(あぶらな科)

ナズナ特徴
 道ばたや畑、土手、荒れ地に生える二年草。春の七草の一つ。早春に30pほどの茎を立て、白い十字形の花をつけます。花後、ハート形の実ができます。形が三味線のバチに似ているので、「ペンペングサ」とか「シャミセングサ」とも呼ばれています。

食用
 若苗は根際からとり、生のままてんぷらに。ゆでて、おひたし、汁の実、あえものに。七草がゆとして食べます。

薬用
 利尿、止血に煎服します。また、目の充血に煎じた液で洗眼します。


ハコベ(なでしこ科)

ハコベ特徴
 道ばた、土手、野原、田畑、山地によく見られる二年草。春から夏にかけてはびこりますが、冬でも花をつけていることがあります。5弁の白い花は、それぞれが2裂しているので、10弁とま間違えやすい。この写真はミドリハコベです。春の七草の「ハコベラ」のこと。小鳥が好んで食べるので、「ヒヨコグサ」ともいいます。

食用
 ゆでて、酢のもの、あえもの、汁の実に。

薬用
 青汁は健胃、整腸によいといわれています。歯槽膿漏の予防に、青汁に塩を入れて乾燥させたもので歯を磨きます。

 

ユキノシタ(ゆきのした科)

ユキノシタ特徴
 湿った石垣、用水路のわき、庭の日陰などに群れて生える、半常緑の多年草。根もとから長い赤色の柄を出して増えていきます。葉の両面に荒い毛がたくさんあります。花びらは5枚で、下の2枚は大きく、大文字草に似ています。5〜7月にかけて長い茎の先に白い5弁花が咲きます。花が風にゆれて動く様子が、雪が降るのに似ているので「雪の下」といいます。雪の下にあっても葉が枯れない生命力の強い草です。庭先に一株植えておきたい野草です。

食用
 昔から食用野草として、てんぷらなどにして食べられてきました。生のままてんぷらに。ゆでて、あえもの、お浸しに。

薬用
 ひきつけ、てんかん、百日ぜきに、生葉に塩を加えてもんで、その汁を少量飲みます。感冒、心臓病、腎臓病に煎服します。      

 
ヨモギ(きく科)

ヨモギ特徴
 日当たりのよい道ばたや草地に生える多年草。草丈は50〜100pくらいになります。葉の表面は緑色、裏面は白い綿毛が密生しています。夏の終わりから秋にかけて、茎の上方に穂状の黄褐色の小さな花をつけます。よく燃える草という意味で「善燃草(よもぎ)」という名前がついたそうです。

食用
 早春の若芽の葉をつみ、熱湯でゆでて水にさらしてすりつぶし、草だんごや草餅に。また、てんぷら、よもぎうどん、よもぎご飯に。

薬用
 健胃、貧血、下痢止めに煎服。腰痛、腹痛、痔の痛みにヨモギぶろ。もぐさの原料にも用いられます。


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