豆腐作り

豆腐作りは思い出の作業です。
私がまだ小さい頃おそらく小学校低学年程度の時、おばあちゃんの豆腐作りのお手伝いをしていました。
 まだしっかり覚えています。冬に暗い土間で二人向き合って火を炊きながら臼をまわしました。
お玉に掬われた大豆が臼の穴に魔法のように吸い込まれていきます。そのしゅわくちゃの手をじっと見つめていました。
私がやりたいと交代させてもらい、臼をゆっくり回してもらっても大豆のほとんどは穴に入らず臼の上に溜まっていくばかりです。
その時の焚火の煙たい匂いや大豆の擦った匂い、臼のずるずる回る感触などまるで昨日の事のように覚えています。
手ぬぐいを頭にかっぶったおばあちゃん。
おそらく一人でも出来たでしょう。
自分の長男夫婦は仕事があるので気がねであてにはできません。
末っ子のかわいい息子は先年高校を卒業し都会に就職して家にはいません。
一人では寂しいので幼い私を連れにして豆腐を作っていたのでしょう。
豆腐作りの臭いは私のおばあちゃんの匂いなのです。

大豆を1升用意します。
国産大豆です。
5リットルのボールにいれて水をいっぱいにします。
1晩浸漬しておきます。
朝になったら水を吸って膨らんでいます。
上には2〜3cm水が溜まっています。
ボールの中の水と大豆の割合を目安にお玉で掬います。
ミキサーで擦ります。
水が少ないと上手く潰れません。
その時は少し水を加えてやります。
お玉2杯くらいづつがちょうどいい感じです。
ボールに移します。
溶けたアイスクリーム位の粘度がいい。
臼で挽いてもこの位だ。
大豆の粒はしっかり潰してクリーム状態にする。
昔はこの作業が一番苦しくて大変だった。
今は1升で20分も有れば擦ってしまう。
全部すったら初めと同じ大きさのボールに一杯になる。
5リットルくらい。
これを生呉という。
これを今から煮る。
大きな鍋に生呉の2倍の水を入れる。
生呉を鍋に移す。
ボールに残った呉はもったいないので水を入れて洗いながら入れてしまう。
少々水が多くなるのは大丈夫だ。
ただ、煮た時吹きこぼれやすくなったり、ニガリを入れて凝固した時余分の水が沢山でるのでほどほどにする。
煮ていく。
底に焦げ付いてしまうのでよくかき混ぜながら煮ていく。
しかし、やはり多少は焦げ付いてしまう。焦げ臭がついては駄目なので弱火で時間をかけて煮ていく。
沸騰したらクリームのように膨らんでこぼれてしまうので気を付ける。
万一吹きこぼれたらそのまま熱い時に布巾で鍋などをふき取る。
油分があるのか冷めたらなかなか取れない。
突然吹きこぼれるので注意しておかなければならないが用心のため水を大きめのコップに入れてそばに置いておくとよい。
沸騰したらいったん火を止め落ち着かせる。その後弱火にして15分煮続ける。これは重要。
火の大きさは噴きあがらない程度。
15分煮たら火から降ろす。
呉を絞る用意をする。
私の自慢の万能絞り機だ。
さらし布を縫った袋にいれる。
袋は口まで縫わずに6cmくらい手前で止めて縫う。
その方が熱い呉等を入れやすい。
手で広げていない方はクリップで固定してある。
一人で出来るようにとの工夫だ。
相方ががいるときは袋を持ってもらうが煮た呉が熱いので大変だし危険だ。
袋の口をねじっておいて絞り機の間に挟み体重をかけ絞る。
この器具を使うと早く絞れるので豆乳が冷める時間がかからない。
冷めてしまうと再加熱しないとニガリを入れても固まらない。
袋から「おから」をだす。
やはりこのボール1杯ある。
おからを絞ったものが豆乳だ。
自家製のにがり。
海水を煮詰めとれたニガリだ。
小さめのぐい飲み2杯を水で溶いて使用する。
豆乳全体にゆっくりかけていく。
しゃもじの上に落しながらかけるとよい。
全部かけ終わるとしゃもじでゆっくり十字に切り、盥の回りもゆっくり混ぜる。
優しく混ぜる。
しばらくすると白い粒のようなものが凝固する。
透明な水に分離しないようならニガリをぐい飲み半分を水に溶いて追加する。
ニガリが多いと固くなってしまうし豆腐が苦くなってしまうので出来るだ少量で作るようにする。
すると写真のように凝固して水と分離する。
自作の豆腐箱
箱の大きさちょうどに切ったサラシ布を敷く。
ざるで水を濾しながら箱の中に豆腐をいていく。
ざるで濾さずに入れてもいいが豆腐の内部に水の空洞ができてしまう。
密度の濃い豆腐にするためには濾した方がいい。
しかしあまり濾すと出来た豆腐が固くなってしまう。
さらし布を内側にたたんで豆腐を包む。
さらし布に余分があり厚さがでると豆腐の表面が綺麗にならない。
1.5リットルのペットボトルに水をいれて重しにする。
4本くらいでいい。
10分くらいすると蓋を取って豆腐を押えてみる。
プルプルと固まっていたらもういい。
シンクに水を溜め、箱から豆腐を出し、さらし布をめくる。
水の中で作業しないと豆腐が崩れるので注意する。
固い豆腐を作ったら沈むし柔らかい豆腐を作ったら水に浮く。
好みだが、私は柔らかいのが好きだ。
豆腐箱に入れるときのざるの水きりの量で変わる。
しっかり切ると固いのができる。
重しの量、時間などが多いと固くなる。
この辺の加減が出来を左右する重要なポイントだ。
箱の蓋を沈めて豆腐の下に敷きそのうえから包丁で12等分に切る。
切り分けたところ。
シンクがそのまま使えるようならしばらく水を入れ替えながらニガリ分を豆腐からだしていく。
ボールに入れて出来上がり。
しばらくは水を入れ替える。
大豆を煮たいい匂いのする大豆だ。
醤油をかけ冷奴で美味しいが、このまま水から手でちぎり水を付けただけで食べるのも美味しい。