農事組合法人の設立は
1.農事組合法人とは
農事組合法人は、その組合員の農業生産についての協業を図ることにより、その共同の利益を増進することを目的とする(農業協同組合法第72条の3)法人で、その組合が行う事業により下記の3つのタイプに分けられます。
・1号法人(出資型or非出資型)
共同利用施設の設置および農作業の共同化を行う法人
・2号法人(出資型のみ)
農業の経営を行う法人(その行う農業に関連する事業であって、農畜産物を原料または
材料として製造や加工や農作業の受託などを行う事業を含む)
・1・2号法人(出資型のみ)
1号法人と2号法人の両方の事業を行う法人
2.農事組合法人を設立するには
3人以上の農業を営む人が発起人となり、発起人会を構成し農事組合法人設立にあたっての基本的事項を検討します。なお、次の項目等について事前に整理しておきます。
①事業目的および事業内容(1号法人、2号法人など)
②法人の名称(名称の中に「農事組合法人」を用いなければならない)
③法人の地区
④事務所の所在地
⑤組合員(農民、組合、みなし農民など)
⑥役員(理事は必須だが、監事の設置は任意)
⑦出資の方法
⑧必要な機械・施設および調達方法
⑨必要な資金および調達方法
⑩労働の対価の支払方法(給与制または従事分量配当制)
3.農事組合法人設立の流れ
4.設立準備にあたって注意すること
事業目論見書の作成
農事組合法人の設立に必要な資料として「事業目論見書」があります。
もともと「目論見書」とは、有価証券の募集や売出しの際に、投資家の判断基準となる
情報を提供するために、発行会社の事業内容や資本構成、財務諸表などの説明が書かれ
た書類で、農事組合法人の設立において、法律上作成が義務付けられているものではあ
りません。
しかし、設立しようとする組合について、組合員となる予定の人に法人の事業内容や資金・施設の整備計画、将来の収支計画などを説明するための資料となるものです。
また、設立後の行政庁への届け出の添付資料となり、税務署への法人設立届の添付資料としても使用できます。
具体的な記載事項は、次のとおりです。
①法人の名称
②法人の所在地
③事業の方針
④組織の内容
・地区 ・組合員
⑤事業の種類
⑥資金計画
・出資の種類 ・出資金 ・1口金額 ・最高口数 ・必要資金の種類と金額
⑦施設の整備
・施設の名称、型式、取得時期、所要経費 ・使用の用途及び効果
⑧収支計画
・貸借対照表(設立当初) ・損益計算書(設立後5年間) ・事業管理費
⑨農地法第2条第3項に規定する要件整備状況
・事業要件 ・構成員要件 ・業務執行要件
以上を、その設立しようとする農事組合法人の計画に沿うように記載します。
また、法人の名称が決まったら、法人の印鑑を作成することをお忘れなく。
定款の作成
その設立しようとする農事組合法人の、基本的な事項を定める定款を作成します。
農事組合法人の定款には、記載しなければならない「絶対的記載事項」、定款に定めていなければ効力を生じない「相対的記載事項」、定款に定めるかどうかは、法人の自由とされている「任意的記載事項」があります。
一度作成した定款を変更するには、総会の特別決議による手続きが必要となり、定款を変更したときは、二週間以内に行政庁(広島県など)への届出が必要で、さらに登記の内容に変更があれば、法務局への定款変更の手続きも必要になります。よく検討して作成しなければなりません。
なお、農事組合法人の場合は、公証役場での定款の認証や、定款への収入印紙の貼付および登記時の登録免許税は不要とされています。
※ 定款(例)はコチラ
設立総会の開催
発起人は、総会の日の5日前まで(中5日必要)に、その組合の加入予定者に対して、設立総会の招集を通知しなければなりません。
設立総会の主な議題は、下記のとおりです。
・定款、規約および規程の制定について
・理事、監事の選任について
・事業計画の承認について
・借入金の最高限度額の承認について
・役員報酬について
・特定農用地利用規程の同意について
(農用地利用改善組合の定める特定農業団体になる場合)
なお、総会が終了しだい総会議事録を作成し、総会議長、議事録署名人および理事は議事録に記名押印します。
法人設立登記、関係機関への届出
設立総会が終了し出資金の払込を行ったら、2週間以内に法人の設立登記をしなければなりません。また、行政庁や税務署など各所への届出が必要です。
申請・届出箇所 |
申請・届出書類 |
時期 |
添付書類など |
地方法務局 |
設立登記申請書 |
出資金払込から2週間以内 |
定款 |
設立同意書 |
出資金領収書 |
理事就任承諾書 |
設立総会議事録 |
印鑑届書 |
登記完了後 |
法人実印 |
代表理事印鑑証明 |
印鑑カード交付申請書 |
登記完了後 |
|
登記事項証明書交付申請書 |
登記完了後 |
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行政庁 (広島県など) |
農事組合法人成立届出書 |
設立後2週間以内 |
登記事項証明書 |
定款(写) |
事業目論見書 |
設立総会議事録(写) |
耕作証明書等 |
税務署 |
法人設立届出書など |
設立後2週間以内など |
登記事項証明書 |
定款(写) |
事業目論見書 |
県税事務所 |
法人設立届・法人の事務所等の設置届 |
設立後5日以内 |
登記事項証明書 |
定款(写) |
市町村 (税務課) |
法人設立届出書 |
市町村に確認 |
登記事項証明書 |
定款(写) |
※労働者を雇用する法人においては、上記の他に年金事務所、労働基準監督署、公共職業安定所への届出も必要です。
農事組合法人の設立をお手伝い
農事組合法人の設立は、地域での話し合いをはじめ、営農計画の検討、多数の書類の作成や、設立総会の準備、さらには設立後の役所への届出など発起人や役員の皆さまはやることがいっぱいです。
当事務所では、設立される農事組合法人の計画に沿うように、書類作成や総会準備などお手伝いいたしますので、発起人、役員の皆さまは地域での話し合いや営農計画の作成に専念していただけます。お気軽にご相談ください。